復興のコミュニティ
あくまで集落単位で見た場合ですが、中越地震で大きな被害を受けると、避難生活や住居再建の経験によって過疎化や高齢化は加速し、いわゆる限界集落に向かい始めることがあります。
この状況になるのは復興時に、集落へ多様な人たちの関わりがあるからです。
被災者は、震災により生活環境が大きく変わりますが、この時、避難所での支援や自宅の整理などに従事するボランティアなど、外部から多くの支援を受ける立場になります。
集中して、地域外の多くの人たちとの関わりが生じることで、多少の混乱は生じますが、支援という関わりだけでなく、被災地がもともと持ち合わせていた魅力の再発見や、多様な立場の人たちとの交流が始まるきっかけとしても機能することがあります。
これらを大事にすることで、人口が減ったとしても、資源としての人については、豊かに転じるという状況になり得るといことです。
このようなことは、一過性の場合もありますが、中越地震の被災地のように、若い担い手が現れたり、地域全体で新たな自治のあり方を模索する動きへと受け継がれることもあります。
すべて場合で、コミュニティを構成する人の数が重要視されることが多いですが、この時、人の数以上に、関係者がどれほど自発的に活動を展開しているかが重要になる場合があります。
社会資産の捉え方も、これまで以上に多様になっていくと考えられます。
新たな復興のかたち
東日本大震災の多くの被災地でも震災前から過疎が進む状況でした。
例えば、雄勝地区(石巻市)では、壊滅的な被害の復興に、多大な時間と労力を費やしたことから、人口は震災前の約4割、世帯数では約5割にまで減少しています。
中越地震の被災地と同じで、内在的な課題であった人口減少が加速したとの見方もありますが、残って再建を進めた多くは、漁業を継続しようと決断した世帯でした。
残る決断をした漁業者は、震災以前の水揚げにまで回復させ、生活環境としてはある程度復興への展望がみえつつあります。
このようなことを考えると、震災後に以前の暮らしに回復させることを目指すべきなのか、改めて暮らしを再開しようとする人たちを支援し、地域の可能性を引き出しながら、新たな地域コミュニティを築いていくような復興を目指すのかについて、考えていく必要がありそうです。
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