自然環境の再利用
リサイクルが製品の素材をそのまま再利用するのに対し、アップサイクルには、新たな価値を生み再生する、創造的再利用という意味が付加されて使われることがあります。
それは、街の復興プロセスでも同じで、ただ壊れたモノを元通りに直すのではなく、必要なモノは即座に直し、それと平行して新たな日常を創造する手法が、地域復興には必要であると考えられています。
埔里鎮桃米郷
その象徴的な地域が、埔里鎮桃米郷(台湾の中心部で埔里町桃米村という感じ。)という地域です。
日本の山間地域と同様に、ここでも過疎化が進行し始めた最中に、921の震災で大きな被害を受けます。
この地域の復興では、自然環境の再生はもちろん、その活用も視野に入れた取り組みが進められました。
まず、桃米郷だけで台湾全体で見られるカエルのうち、かなりの種が生息していることが、災害後、明らかにされます。
この生体環境の豊かさと種の豊富さを軸に、地域観光ガイドの育成と宿泊施設の整備、各種体験プログラム開発、地域産品を活用した料理の開発提供などを進めることで、持続的な地域の発展サイクルを獲得します。
結果、ここを訪れる人は増加し、関連産業の立地によって、若い世代がこの地域に移住し、多くの人たちが定住を進めることとなりました。
一方、桃米郷だけでなく被災地域には、カエル以外にもトンポや蝶の種類も多く、これらを背景として活動を地域全体に広げ、生態環境を維持ながら多様な生き物を観察できる町として再生します。
そして、その環境を守るために自然農法などを取り組む地域として発展を続けることとなります。
このような自然環境の新たな再生によって日常の質が向上し、結果として地域の減災機能の高まることにまでもつながることとなりました。
たたみ(街を縮小し)ながらより良い復興を進めるために、人口減少が進んでも地域を元気にし、再生することは可能であることの証にもなっています。
物理的な拡大を軸とした、いままでの目標からうまく距離をおくことも大事で、住民・地域・自治体が等身大で、どうしたいのか・何ができるのかを実践できれば、街の縮小に反し可能性は大きく広がり始めると考えられます。
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