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【必要の場をツクル設計事務所】-長尾アトリエ の 長尾 です。
保存と活用
2012年。イタリア世界遺産の暫定リストに、"タイプライター"や"電子計算機"の会社として知られるオリベッティ社が関わったイブレアの"近代産業遺産群"が加わりました。
ここまで来るには、当然、対象の"近代建築物群"を保存するための"活動"が、行われてきたのですが、その"保存活動"には、地域"コミュニティと一体"で進められてきた。。という"特徴"があるようです。
具体的に眺めてみると。。まず、20世紀初頭の大きな転換期"モダニズム"を背景にイブレアは、"科学と芸術の融合"という、新たな地域文化が誕生した場所となりました。
そして、時代とともに"地域産業のカタチ"は、誕生した当時のままという訳にはいかず、"基礎的な要素のみ"が、残るコトとなるのですが。
この"近代建築群"。ここから"衰退"してしまうのではなく。。
例えば、通信産業として、オリベッティ社の下請企業が"進化させてた事業"を展開し地域産業を"持続"させていたり、若手建築家達が中心となり、地域文化を"継承"する活動を行ったりしています。
また、博物館、研究所などは、20世紀当時の世界中の"タイプライター"や"電子機器"を収集展示を行い、さらに元オリベッティ社の技術者が、市民に機械工学や電子工学の基礎を教える"拠点"としての役割を担ったりしています。
文字通り"再生"です。
いま、日本でも建築物の"保存と活用"が、大きな課題となっています。
そんな中、富岡製糸で講演を行ったこともあり、イタリアで近代建築の"保護活動"を実践している建築家のエンリコ・ジャコペリ氏が、先日、広島の"平和記念聖堂"はとても"重要な建築物"と、発言していました。
実はこの発言、日本とイタリア間の文化の違いを述べているもので、真意は、文化財などオリジナルの建造物を"忠実に復元"したり"当時のままのカタチを保存"することを重視する日本に対し、
時間とともに"緩やかに変化を遂げてゆく"、イタリアでの建築遺産の"保護方法"との違いを述べているのです。
文化財に指定された茅葺屋根の住宅に住まわれている方々が、その"カタチを維持する"のにとても苦労されている話を聞くことがあります。
もしかすると"保存と活用"を同時に行うためには、文化や産業の変化と同様に建築物の"カタチの変化"の許容も必要なのかもしれません。
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