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世界に分布する海上の生活
杭上家屋へと住まいを移すサマ・ディラウトフィリピン南部のスールー諸島には、船を家にするサマ人(サマ・ディラウト)が暮らしています。
もちろん、水の上で生活するカタチは、スールー諸島だけではなく、南米、アフリカ、中東、東南アジアと、世界全域に分布しています。
水上生活のカタチは多様で、
- 停泊させた"船"の中で生活を行うものは、世界の多くの地域で見られます。
- 浮力を利用し、"フローティングハウス"と呼ばれる、陸上に建てる家と同様のものを水上に浮かべるもの。
- 浅瀬に杭をうち、その上に"高床式の家屋"を建てるもので、家同士をつなぎ、また通路を建設することで、大規模な集落になることも多いです。
- 河川沿いなどで、船を出す利便のために1階を船着場、2階を住居とした"水辺の家"。
など船に限らず、様々なカタチがあります。
それは日本も例外ではなく、明治維新前から"家船"と呼ばれるヒトが九州、瀬戸内海一帯、日本海沿岸などにいました。
家船は第二次世界大戦後も瀬戸内海地域を中心に多数の根拠地を持っており、60年代頃までは、広島県に200隻ほどの家船が存在していました。
しかし、70年代に入ると多くのヒトが、陸地に移住したため、この地域に家船の姿はみられなくなりました。
これとは別に、少し前の1900年代に入る頃からは、貨物船の大型化が進み、船を利用した商売や貿易などが発展したため労働者の中には、自分の船の一部を住宅化して住むようになるヒトも居たそうです。
埋め立て前の東京湾周辺に多く見られ、1万人弱を数える規模となっていました。
このような住民の福利厚生を行うために水上会館や水上学校などが建てられたほか、水上警察署なども設置されてきたのでした。
近年のサマ人
さて、船を家にするサマ人の多くは、近年、海の上を移動し続ける家船での生活から離れ、遠浅の海の岸辺に建てられた高床式の杭上家屋で暮らしています。
嫁いで陸地に暮らす人もいます。
海の上に建てられた杭上の箱形の家は、海からの風が入り、内陸とくらべて虫も少なくとても快適です。
杭上家屋の内部は、その多くが家船のように仕切りのない大部屋になっています。
杭上家屋で生活していても、サマ人と海とのつながりが無くなった訳ではありません。
高床式家屋の杭には船がつながれ、長期間漁に出たり、出稼ぎに行ったり、彼らは今もひんぱんに海を移動しています。
サマ人(サマ・ディラウト)は、海での暮らしをルーツとし、住み替えや建て替えを簡単にできる環境で生きてきました。
日本的な"住まい"の感覚にくらべれば、彼らは"定住・移動"について、より柔軟な考えを持っているのかもしれません。
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