いつもありがとうございます。【必要の場をツクル設計事務所】-長尾アトリエ の 長尾 です。

テンペル型

900を超える島々が連なるフィリピン南部のスールー諸島。

ここには、船を家にするサマ人(サマ・ディラウト)が暮らしています。

近年では、エンジンを装備した船が主流になっていて、大型の家船から、小型まで様々です。

これらの内、ひとつの世帯が暮らせる程度の船をテンペル型と呼びます。

テンペル型の家船は、おおよそ全長11.5m、幅が1.6mと、10帖程度の大きさです。

この上に、船首と船尾を除いて、高さ1.8mほどの三角形の簡易的な小屋組みが置かれ、ヤシの葉などで編まれた屋根で覆われています。

もちろんここが、居住空間です。

この屋根のおかげで、海上の厳しい日差しをさえぎり、風をうまく取り入れることができるのです。

また、置いてある生活用品や家具は、必要最低限のものだけで、壁などの仕切りは無く、コンロを使った調理や食事も船の中で行います。

入浴は海に入って身体の汚れを落としてから、船の上で真水を使ってすすぎ、用を足すときは、屋根のない船尾の床板を1枚はずして海に排泄します。

寝る時は、頭を船首に向かって左側に、足を右側に向けるのですが、これは祖先の霊に対する儀式を行うとき、船の左側に霊の象徴を置くことに関係しているそうです。

家船の役割

家船には3つの役割があります。それが、

  1. 寝起きしたり食事をしたりする"住まい"。
  2. 海の上を移動するときの"乗物"。
  3. 漁をするときの"商売道具"。

の3つです。

住まいにも乗物にも道具にもなる家船で、1日の間でも潮の満ち引き、風、時間帯によって広い海を移動します。

また、夏冬の季節風の影響などさまざまな環境の変化によって、1カ月、1年という単位で海の上の居場所を変えます。

時には強風を避けて"いかり"をおろし、停泊することもあります。

こうした環境の要因だけでなく、近隣の人間との関係がうまくいかなくなった時や、身の回りが危険になった時などに、家船で移動し、距離をとったり、安全を確保したりもするのです。

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