いつもありがとうございます。【必要の場をツクル設計事務所】-長尾アトリエ の 長尾 です。

地域によるツクリの違い

中国北部に広がる黄土(こうど)高原。

この地域は、建物の材料になる樹木が育ちにくい土地のため木材などをほとんど使用せず、"ヤオトン"と呼ばれる家を地面の中につくります。

この"ヤオトン"のツクリは、地域の気候によって違いがあります。

黄土高原では、西部と比べて東部の方が温暖で雨が多く降るため東部では、外壁に焼レンガを用いたり瓦製の庇などを設置して雨を凌ぐ仕様になっています。

玄関が狭く、アルコーブのように少し奥まったところに、玄関扉が設置されている場合があるのですが、これも雨を考慮してのことだと思います。

家の中に入ると、長方形の部屋が続きます。

部屋の天井は、土の重さに対抗するためだと思いますが、半円か末広のアーチ型で、かまぼこのような形をしています。

一方、西部では、それほど雨は降らないため庇なども無く、玄関廻りの壁面は、横穴を掘った時の残土を、日干しレンガにし、これを積んで仕上げます。

入口の扉もほぼ壁面と同面の位置で、部屋の天井は、東部と同じくトンネル状のアーチ型です。

部屋の採光

入口が狭く、奥のほうが空間が広くなる東部では、壁を漆喰で白くし、自然光を活かすツクリになっています。

一方、西部では、玄関扉の周りに採光用の開口が複数箇所あります。

東部・西部共通なのは、台所や洗面所などを明るい入口付近に設け、部屋の奥の暗い場所は物置にするなど、自然の光を最大限に生かした配置です。

冬暖夏涼

ヤオトンの長所は"冬暖夏涼"です。

季節や時間により寒暖の差が大きい黄土高原ですが、ヤオトンの中だと冬は暖かく、夏は涼しいのです。

日本でも最近、再生可能エネルギーの"地熱"の活用によって知られ始めていますが、

地中の温度は一般的に、地下6mほどで一定になります。

つまり、井戸水と同じで年間を通してあまり温度が変化しません。

また、地表面に近い土が断熱材の役割を果たしているため、熱さや冷たさが地中に伝わるまでに時間がかかり、暑い夏に最低14℃、寒い冬に最高16℃と、夏よりも冬の方が地中の温度が少し高くなります。

このような地中の特徴をうまく利用して、快適に過ごせるように造られているのです。

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