いつもありがとうございます。【必要の場をツクル設計事務所】-長尾アトリエ の 長尾 です。
保存再生とデザイン
建物を保存再生する上で、単に"建てられた当時の価値"を守るだけでは、継続的に"使い続ける保存”は実現できません。
つまり、保存再生においても基本的問題は"デザイン"ということです。
1つ目の「アテネ憲章」
1931年、国際博物館事務局の呼びかけによリ、ギリシャ、ローマの歴史遺産の保存への対応を主眼として、アテネで国際会議が開催されました。
この会議は、国際的に初めて"歴史的建造物"の概念が明らかにされ、保存のための"法的・科学的"課題の話し合いが行われたのでした。
この会議の"結論"は以下の4項目。
- 遺産の活用の際、その固有の価値を尊重。
- 修復の前に、メンテナンスをする。
- 様式を統一することが修復の目的ではない。
- 修復の際、必要に応じ最新の技術を用いる。
この時点の項目に"メンテナンス"があるのは、安易に手を入れない(修復しない)ということだと思います。
最新の技術の使用については、その後の"ヴェニス憲章"で、よリ慎重に行うとしています。
2つ目の「アテネ憲章」
面白いのが、この会議から2年後の1933年に行われたCIAM(近代建築国際会議)第4回会議で、いわゆるモダニズムの建築家たちが、アテネで宣言したものを、一般的な"アテネ憲章"としているところです。
この2番目の"アテネ憲章"とは、最初の"歴史的建造物"の保存に加え、"都市計画"についても考え方をまとめたものです。
具体的にはまず、都市から"住む・働く・レクリェーション・交通"の4機能を取り出します。
そして、これらをコントロールすることで、都市を造ろといった宣言です。
この宣言はその後、世界各地で計画された新都市に、大きな影響を与えたとされています。
機能
4機能の内、特に重視されているのが、"住む"です。
憲章は"住居"に、
- 都市の中の最上に置く。
- 健康の重視、適当な人口密度。
- 最小限の日照。
- 幹線道路に沿った配置禁止。
- 現代建築技術の利用。
- 高層住宅は距離を離して地上は開放する。
などの基準を示しています。
"働く"場である"職場"については、
- 住居との距離を最小に抑える。
- 工場地域は住居地域と緑地帯で離す。
などを示ています。
そして、この機能的に分離された都市を結ぶのが"交通"で、
- 主要交差点は立体交差。
- 歩車道を分離。
- 幹線道路と住宅地の道路は機能で分ける。
- 幹線道路は緑地帯で囲む。
といったものです。
実はこれ、建築家ル・コルビュジエが提唱した"輝く都市"の理念に沿った内容で、都市の機能は"住居・労働・余暇・交通"にあり、都市は"太陽・緑・空間"をもつべきとしています。
批判
その後、アテネ憲章は明快な理論として、各国の都市計画に大きな影響を与えます。
しかし1950年代に入ると、CIAM内部でも批判が起こり、その後も、ジェイン・ジェイコブズ著の「アメリカ大都市の死と生」など、様々な立場から批判を受けることになるのでした。
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