いつもありがとうございます。【必要の場をツクル設計事務所】-長尾アトリエ の 長尾 です。
ルーマニア、マラムレシュ地方
ヨーロッパ南東部に位置するルーマニア。
カルパチア山脈をはじめとするいくつかの山地に囲まれた平原、盆地、丘陵地に分かれ、東部は黒海に面しています。
中世の街並みが保存され、争いの際、最後の砦とされた"要塞教会"や"城"が数多く残っています。
南部に位置するトランシルヴァ二ア地方にあるブラン城は、ドラキュラ伝説として知られる有名な場所です。
一方、ルーマニア北西部に位置するマラムレシュ地方。
ここは、ウクライナとの国境にもほど近いのどかな田園風景が広がる美しく素朴な田舎です。
昔ながらのルーマニアの風習や文化が息づくこの場所では、普段から民族衣装に身を包んだ村人が昔と変わらない暮らしを送り、ゆっくりとした時間が流れ、まるでグリム童話に出てくるような世界感があります。
もともとこの地域は、山に囲まれており、他の地方へ移動するためには山間の谷を上り下りするか、峠を越えなければなりませんでした。
そのため、時代の変化はゆっくりと、この地域に訪れ、ヨーロッパ中世のような自給自足に近い生活を守ってきました。
この地方の暮らしの基本は、家畜を飼育すると同時に、その家畜から出た排泄物をもとにした有機肥料で土地の地力を維持する"有畜農業"です。
家畜には羊や牛、ヤギ、馬などがおり、特に羊はそれぞれの家で数頭から数十頭飼われ、5月には羊飼いが山の牧草地で放牧し、寒くなる8月末から冬の間は平地へ戻して家畜小屋の中で飼育します。
また、季節による生活の区切りとともに、キリスト教の祭日が人々の暮らしに大きく影響します。
春の復活祭、夏の聖母就寝祭、冬のクリスマスなど、一年を彩る教会の祭日が、農民の重要な農耕歴のサイクルと一致しており、それぞれの日に教会であげられるミサに参加することが、伝統的な生活の中に根づいています。
マラムレシュ地方のヒトはとても勤勉で、夏場は家の外で朝から晩まで農作業を行います。
農業が休みになる冬場に、仕事を求めて南方に出稼ぎに出る人もいます。
伝統的な住まい
マラムレシュ地方には、豊かな森林を活かしたすばらしい木材加工の文化があります。
モミの木やカシの木が手に入りやすく、食器やおもちゃ、農業道具などの生活用品に使われるほか、伝統的な住まいも木で造られています。
道路沿いに豪華な彫刻を施した巨大な木造の門があるのが、マラムレシュならではの街並みです。
家の素材のほとんどはモミの木などの木材で、クギも昔はほとんど使いませんでした。
壁の組み方は、木材を水平に積み重ねて壁をつくる"校倉造り"で、屋根は、4方向に傾斜する寄棟にするのが特徴です。
屋根は"モミの木"の板で作られており、軒先からはじめて棟の方向に板を重ねてゆきます。
上にならべる板は下の板と互い違いにずらしながら重ねることで、屋根全体を覆い、しっかり組み合わせるので、雨もりにも耐えられ、耐用年数も40~50年ほどになります。
≪ 1級建築士事務所 長尾景司アトリエ ≫ 長尾景司 ≪