いつもありがとうございます。【必要の場をツクル設計事務所】-長尾アトリエ の 長尾 です。

コンパクトな空間

東ヨーロッパ、バルカン半島に位置するルーマニア。

この国の北西部に位置するマラムレシュ地方は、山と豊かな森林に囲まれています。

このため、木材の加工の文化が発達し、日用品から住いまでと、身の回りにあるモノのほとんどが、木で造られています。

主に使われるモミの木は、柔わらかく加工しやすいのですが、強度が無く大きな建造物には向きません。

このためこの地域の住いは、3部屋ほどで構成されるのが一般的で、小さな家になっています。

さらに、地域の気候や慣習などの影響もあると思いますが、部屋が複数あっても生活に使用している部屋は、調理兼用のストーブがある居間だけの場合が多く、このストーブを中心とした空間に、居間・台所・食卓・寝室・客間の全ての機能が備わっているのです。

このため、お客さんも居間でもてなします。

衣類を入れる長持ち(収納箱)や食器棚、ベッドもこの部屋にあります。

コンパクトな家屋のそれほど広くない空間に、夜通し暖かいストーブの壁から伝わる熱。

そして保温性のある木材を家の素材として用いて、長い冬を暖かく過ごすことがマラムレシュ地方の暮らしの特徴です。

一方、夏は、外に調理用ストーブなど加熱場所を作り、家の中に熱がこもらない工夫をしています。

限られた資源の活用

伝統的なマラムレシュの家には水回りがありません。

炊事やお風呂は、屋外にある井戸の水を水がめやバケツに入れて、家に持ち込んで使います。

また川には、"すり鉢状のカタチ"をした、大きな木造の洗濯機があり、集落で共有して使っています。

水車も共有で、小麦を挽いたり、フェルトをたたくために利用します。

さらに村によっては蒸留所があり、村人が持ち込んだ果物から蒸留酒を作ったりします。

そして、動物たちとの共存も欠かせません。

大切に育てた家畜が貴重な食料になるだけではなく、屋外のトイレと家畜小屋から出た排せつ物はまとめて発酵させ、家庭菜園や少し離れたところにある畑で、野菜や果樹の有機肥料となるのです。

マラムレシュ地方には、豊かな森林と狭い土地を利用した生活があり、その限られた資源の中で、何世代にもわたって暮らしが受け継がれてきました。

小さな家での暮らしが、村の伝統を受け継ぐための重要な役割を果たしてきたのです。

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