いつもありがとうございます。必要の場をツクル設計事務所-長尾アトリエ の 長尾 です。
確かな結末へ加速する-場所づくりを3DCGによるビジョンの共有から始めることで、確かな結末にたどり着くためのより良い道筋が現れます。
観光地とは
竹富島をあげて観光に舵を切り始めてから50年経ちますが、2000年代に入ってからの景観のあり方は、それまでとは大きく異なり始めています。
2010年代、住宅をお店に改修するために、軒にトタンを張り出す、建築確認申請の図面通りに建築を行なわない。
防風・防火の役割を果たしながらも美しい島の景観をつくりだしている石垣による屋敷囲いを設置しない宿泊施設。
外部からの目隠しだけではなく、魔除けとしての意味をもち建物正面に設置されるヒンプンと呼ばれる壁を観光客が入りやすいように造らない飲食店。
このように、一部ですが、自然や伝統からの教えを絶つ無秩序な風景があります。
どの土地でも同じで、所有者は軽微な変更だと主張しますが、状況の変化に伴い、美しい景観を維持する理由を認識し直すことも必要なのかもしれません。
御嶽(うたき)
土地の豊かさに感謝したり、季節の変わり目に祝いを行なう祭祀ための施設を御嶽(うたき)といいます。
ちょうど島の真ん中に位置する清明御嶽(マイヌオン)がある聖地、この場所に観光名物の水牛車ステーションがあるのですが、もともと環状線沿いにあった仮設のプレハブを移動した受付小屋です。
この風景に島の歴史上初めての手鎖、つまり罪人とまでは言わないにしても、せめて、歴史や伝統を絶ってまでの商売はやめて欲しいと多くの住民が詰め寄ります。
行政も加わって協定を締結しましたが、何故かそのままで、経済が回り始めると自然に人が集まり、さらに仮設のプレハブは増え続けます。
Uターンする住民に加え、都市で育った人たちのIターンで新住民が増え、人口も増え、観光業の接客のために通勤してくる人も増えます。
お金の流れは人の流れを変え、島の景観も変えてしまいました。
多様になる住人と変わる景観
増加した観光客のために働く人たちが島に加わり、波になり、アルバイトがそのまま居住者となり、ネットで集客し、ユーチューバーも誕生します。
美しい景観を維持するために、自治会には調整委員会、行政には審議会があります。
伝統工法を守ると雨漏りがするという住民の要望に対し、この審議会が、伝統工法の技術者がいないことと、住民の権利を優先的に保護しなければならないとの理由で、瓦屋根に変わり、ルーフィングの使用許可を出します。
テセウスの船の議論はあるにしても何を守れば文化財なのか、どこに線引きがあり誰が決めるのか。
最後の砦である審議会が、その線引きを曖昧にしてしまうことで、当事者にとっては小さなほころびでも、いずれ全く異なる意味をもつことがあるのかもしれません。
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