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【必要の場をツクル設計事務所】-長尾アトリエ の 長尾 です。
日本とヨーロッパでの認識の違い
世界遺産の対象が"建築物"の場合、対象に関係する"地域"や"街"も含めて登録されることがほとんどです。
そして、その"地域"や"街"が登録された時、遺産として、"保護"するのか?"活用"するのか?については、日本とヨーロッパでの認識に、少し違いがあるようです。
オーストリアのウィーン歴史地区。
古代ローマ時代からの歴史があり、旧市街には、様々な"時代"の様々な"建築様式"の建造物群があります。
特に、バロック時代以降の優れた"建造物群"や"都市計画"などの評価に加え、"音楽の都"としてヨーロッパ史上で重要な役割を果たしたとして、2001年に"街ごと"世界遺産登録されました。
しかし最近になってこの"歴史地区"に、70mを超える高さの高層マンションを中心に、宿泊施設や娯楽施設などの計画が立ち上がります。
これには、少子高齢化が進んでいるウィーン。。。という背景があります。
つまり、社会保障費の増加に伴い、新たな税源を確保しなければならないため都市開発により、大企業を誘致したり、富裕層の移住を促そうということです。
ちなみに、移民の受け入れによりウィーンの人口は、年々増加しています。今後の日本も同じような感じになっていくのでしょうか。。計画が施行されれば、ウィーンの景観が大きく変わることになります。。
そこで、ユネスコは昨年、歴史地区の普遍的な価値が損なわれないよう、適切な対策を取るべき。として、登録抹消も視野に入れた"危機遺産"に指定します。
一方、ウィーン側は、危機遺産への指定より、街の発展のほうが重要。とした認識です。
つまり、登録を抹消されても、世界の中で、最も美しい街のひとつであることに変わりはない。といった姿勢なのです。
そもそも街は、遺産という"名前"の美術館なのではなく、ヒトが働いたり。。暮らしたり。。と日常があり流動しています。日本の世界遺産の中には、"名前"や"肩書"を重視するばかり、年々観光客が減ってしまっている場所もあります。
やはり、"地域・街"の"発展・活性化"を目指すのであれば、"カネ"と"モノ"のみに焦点を絞るのではなく、"名前"や"肩書"の前に、地域の"ヒト"に焦点をあてながら"保護"と"活用"のバランスを考えることが必要なのかもしれません。。
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