いつもありがとうございます。必要の場をツクル設計事務所-長尾アトリエ の 長尾 です。
市民団体
フランスの社会を考えるうえで欠かせないのが、「個人の自立」と「連帯」という考え方です。
「自由・平等・友愛」を理念とするフランスでは、一人ひとりの権利や自己実現を大切にしながら、社会の中で互いに支え合うことも重要視されています。
その一つの形が、アソシアシオン(Association)≒市民団体です。
1901年から法律によって市民による団体設立が認められ、文化、スポーツ、教育、福祉など、幅広い分野で活動しています。
高齢者支援の分野でも、このアソシアシオンが重要な役割を担っています。
La Maison Yersin(イェルサン館)
パリ13区にあるイェルサン館は、高齢者と生活に不安を抱える人のための小規模な住居です。
17戸の高齢者住宅に加え、50歳以上の生活に不安を抱える人向けに24戸が用意されています。
運営を担うのは、1946年に設立された「Les Petits Freres des Pauvres(レ・プティ・フレール・デ・ポーヴル」で、多くのボランティアが活動しています。
施設内にあるアクティビティ室では、絵画教室が行われ、2階のカフェは入居者の食事の場であると同時に、地域との交流の場にもなっています。
高齢者住宅は基本的に独立した住まいですが、昼食やおやつ、アクティビティなど、入居者同士が自然に交流できる機会も設けられています。
4市が共同運営する施設
パリ近郊には、複数の自治体が共同で運営する「Residence de l’Abbaye(レジダンス・ド・ラベイ)」もあります。
マルヌ川沿いの緑豊かな敷地に、高齢者住宅や老人ホーム、デイケア、ホームヘルプサービスなどを整備。
施設内にはレストランのほか、ヘアサロン、エステ、衣料品店、図書館、120席の劇場など、多様な共用施設がそろっています。
介護や生活支援だけでなく、食事や買い物、文化活動、交流など、日常生活に必要なさまざまな機能を一つの場所に集めているのが特徴です。
さらに、託児所も併設され、子どもたちと高齢者が日常的に接する機会が生まれています。
高齢者だけを対象とした空間ではなく、地域のさまざまな世代が関わる場として機能しているのです。
「介護」から「暮らし」の場へ
これらの施設に共通しているのは、単に高齢者を介護するための場所ではなく、これまでの生活や社会とのつながりを維持しながら暮らせる環境を重視している点です。
入居者が施設運営に参加する自治組織もあり、企画のための予算も用意されています。
入居者が主体となって、さまざまなイベントを企画することもあります。
「住む」「食べる」「楽しむ」「交流する」。
高齢者施設にこうした日常の要素を組み込むことで、施設そのものが一つのコミュニティになっています。
高齢者が社会とのつながりを保ち、自分らしい生活を続けるための環境づくりにも重点が置かれています。
日本の高齢者施設を考える際、「介護を受ける場所」だけではなく「地域の中で暮らし続ける場所」という視点は、一つの参考になりそうです。
