いつもありがとうございます。【必要の場をツクル設計事務所】-長尾アトリエ の 長尾 です。
ヤズドの家の構成
西アジア・中東に位置するイラン。
そのほとんどが砂漠で年間の降水量も少ない乾燥した土地のため、この土地の住いには特徴的な仕掛けがあります。
イランの中心部に位置する街"ヤズド"。
砂漠に囲まれたこの街の住宅地は、家と家の間に高い土壁があり、その壁によって造られる"細い道"が通っています。
道の上部には所々両側の壁をつなぐアーチがかかっており、両側の壁同士を支える役目をしています。
この壁には木の扉がついていて、これが家の玄関扉となります。
玄関は"ダルガー"と呼ばれ、日本のそれと同じく来客に応対するための空間です。
この街では1つの共有玄関の先に、兄弟や親族の家族が住む別々の家がある構成が多いため、玄関の先には"ハシティ"という八角形の小さな空間があり、このハシティからそれぞれの家に行けるつくりになっています。
また、ハシティから続く廊下の先には中庭があり、中庭の周りをぐるりと取り囲むように、各家や部屋が設けられています。
中庭に面した部屋の窓は一定の大きさでつくられているため、整然とした印象です。
部屋の床にはカーペットがしかれ、基本的には床に座って生活し、食事や家族との団らん、寝るのもすべて同じ部屋を使います。
夏と冬で部屋を住み分ける
中庭には、ザクロやイチジクなどの樹木がたくさん植えられ、緑多い空間で、夏の厳しい日差しを樹木がさえぎり、木陰が家の中の暑さをふせいでくれます。
また、涼しさを運んできてくれる池が設置されることも多いです。
そして、中庭の南側は"タラール"と呼ばれる半屋外の部屋があり、直射日光が当たらず、暑さをしのげるため、夏に過ごす部屋として利用されます。
一方、中庭の北側は、主に冬用の部屋です。
このように季節によって部屋を住み分けることで、1年間の気候変化の中で快適に暮らす工夫をしています。
上空の涼しい風を家の中に取りこむ"風の塔"
夏の部屋である"タラール"の上部には、"バードギール"と呼ばれる煙突のような高い塔が設置されており、上空の涼しい風を家の中に取り込むための"風の塔"となっています。
バードギールは、取り込んだ涼しい風をタラール、そして中庭を通し各部屋へ運ぶ、自然の風を利用した空調設備なのです。
煉瓦の家が建ち並ぶヤズドの街の"風の塔の家"は、暑く、乾燥した厳しい気候に建つ、自然の力を利用した究極のエコハウスなのです。
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