いつもありがとうございます。【必要の場をツクル設計事務所】-長尾アトリエ の 長尾 です。
塔状住宅の内部
中東アラビア半島。
サウジアラビアの南側に位置するイエメン共和国。
この国の首都サナアでは、縦長の直方体のかたちをした塔状の建物に多くのヒトが住んでいます。
道路に面した家の入口である重い木の扉には、独特のかたちをした鉄製のノッカーがついています。
ノッカーがたたかれると、住人が上の階にあるのぞき窓から来訪者を確認します。
その後、上階にあるロープを引っ張ると、1階玄関につながっている"かんぬき"が外れ、重い木の扉が押し開けられる仕組みになっています。
1階は居住空間ではなく、もともとは家畜小屋でした。
また、かつてイエメンでは、しばしば起こっていた部族間の争いの際、外敵の侵入を防いでいたため、1階にはほとんど窓がありません。
中2階には穀物などの"貯蔵庫"があり、その上の階からが居住空間になります。
3階は外敵に襲われたときに防衛できるよう、通常男性が暮らす場所とともに、"ディーワーン"と呼ばれる広い部屋が設けられ、応接間や家族の集まる空間として使用されます。
絨毯を敷き、床に直接座る生活スタイルであるため、部屋にはイスやベッドなどの家具はありません。
夜は床の上にマットレスなどを敷いて、毛布にくるまって寝ます。
また、各階の中央はホール状の廊下となっており、これを挟んで南側は冬の部屋、北側は夏の部屋として使い分けすることもあります。
4階には女性が暮らす空間があり、台所や寝室があり、来客用ののぞき窓もこの階に設けられることが多いです。
風通しの良い家の北側には台所があり、伝統的な"冷蔵庫"に、肉や野菜をぶら下げて保存しています。
最上階は、下の階よりもひとまわり小さく、"マフラージ"と呼ばれる来客用の展望室になっていて、社交の場としても利用されます。
家の大きさにもよりますが、低層階が家畜小屋や穀物貯蔵庫で、最上階がマフラージ、その間が居住階というのが基本。
1軒に10~30人程度の家族で暮らしています。
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