いつもありがとうございます。【必要の場をツクル設計事務所】-長尾アトリエ の 長尾 です。
マレーシアの民族の知恵
夏、高温多湿になる日本では、湿度調整ができる木や障子、畳などが住居に使われてきました。
同じように、他の国にも気候風土にあった工夫が施された住居が数多くあり、それらは環境にも人にも優しい自然に寄り添ったサステナブルな空間になっています。
日本の国土よりやや小さいマレーシア。人口は、東京都の3倍くらいです。
豊富な天然資源や、工業化の成功、ITの先進国政策など近代化が進む一方で、いまでも多くの少数民族が暮らすサラワク州があります。
川や森で住居を構えたり、農地を持つなどスタイルはさまざまですが、これら少数民族はロングハウスという長屋住居で、10~50人ほどの大家族が一緒に暮らしています。
いまで言うシェアハウスのような空間構成で、その構造は、熱帯性気候で、雨季があるこの地域の暮らしに適したものです。
なかでも有名なのは、窓がないイバン族のロングハウスです。
長さ約150m、幅10m以上ある木造の高床様式で、
- ルアイと呼ばれる廊下。
- 露台(バルコニー)の役割を果たすタンジュ。
- 家族の住居部分のビレック。
- 屋根裏部屋のサダウ
などから構成されています。
ルアイやビレックの床の部分は、放湿性・速乾性にすぐれた"竹"でスノコ様式に作られることが多く、風通しや水はけも抜群で、荒れた天候が続く雨季でも快適に暮らすことができるようです。
イバン族の日常では、ちょうどバルコニーに面するサンルームのような中廊下の"ルアイ"で男性は木彫りをし、女性は織物をして日中を過ごします。
他にも、ゲストをもてなしたり、酒を楽しんだり、コショウなどの作物を干す場所としても使われ、多目的共用スペースとしても機能しています。
また、床下では家畜を飼っていたりと、まさに自然環境に適し、交流もできる理想的な住まいなのかもしれません。
ただ、このような理想的で持続可能(サスティナブル)な空間は、画一的なモノではなく、環境や条件により変化するものだと改めて確認させられます。
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