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2つのプロセス
建築史家であったケネス・フランプトンによると、「批判的地域主義」を実践するためには、2つのプロセスを通過する必要があるとしています。
ひとつめが、世界文化の全側面を「脱構築」するということです。
脱構築とは、既存の概念を分解して、その中にある矛盾や偏りを明らかにする考え方で、建築の場合、特定の様式を見直し、新しい可能性を探ることになります。
つまり、グローバルな影響が大きい現代建築を分解・見直すことで、世界中でみられる同じようなデザイン、その土地の文化・歴史と関係のないデザインに、疑問を投げかけるということです。
ふたつめが、総合的対決を通じて「普遍的文明の明確な批判」を達成するといったものです。
これは、「地域固有の文化・歴史」と「普遍的な建築の要素、例えば、光・風・素材・空間といったもの」を組み合わせることで、新しい建築のあり方を模索するということです。
フランプトンは、この二つのプロセスによる緊張関係を体現し、地域に根ざしながらも、現代的なニーズにも応えられる建築としてパウスペアー教会を紹介しています。
その理由として、合理的に積まれた外壁コンクリートプロックと非合理性的で、教会の聖なる空間を現す不経済なヴォールト架構が、批判的地域主義と結びつくからとしています。
ちなみに、ヨーン・ウッソンの代表作は、シドニー・オペラハウスですが、コペンハーゲン出身の建築家のため設計したバウスペアー教会は、地元での仕事ということになります。
ポストモダン
またフランプトンは、ロバート・ヴェンチューリやチャールズ・ジェンクスが掲げるいわゆるポストモダンにも厳しい立場です。
ポストモダン建築とは、モダニズム建築が機能性や合理性を重視することに対し、歴史的な要素や装飾を取り入れたりユーモアを交えた表現を用いることで、多様な空間を生み出そうとする試みのことです。
このポストモダン建築の代表が、古代ローマの都市計画をモチーフにしたデザインが特徴的な、磯崎新氏によるつくばセンタービルですが、ポストモダンだからといって、一概に批判的地域主義に反している訳でもありません。
つくばの歴史や文化、風土を考慮しながら普遍的な建築要素も融合させている観点からすると、批判的地域主義を実践しているとも言えます。
アルヴァ・アアルトによるセイナッツアロ役場も同じで、モダニズム建築に近い手法ですが、その場所性を考慮し、音・香・手触りなども重視してデザインされています。
このようにフランプトンによると、批判的地域主義を実践する建築家としては、ルイス・バラガン(メキシコ)、安藤忠雄(日本)、アルヴァロ・シザ(ポルトガル)などになります。
いずれもモダニズムをベースにしながら、独特の展開に成功している建築家です。
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