いつもありがとうございます。【必要の場をツクル設計事務所】-長尾アトリエ の 長尾 です。

機能的なゲル

国土のほとんどが、樹木が育ち難い高原地帯のモンゴル国。

このため、ゲルと呼ばれる移動式住居とともに遊牧中心の生活文化が発達してきました。

このゲル、断熱・防水がシッカリしたテントのようなつくりで、機能的な天窓までついています。

一般的な住居としてのゲルの場合、大きさは直径平均で、約5mほどで、基本的には1つのゲルに、1つの家族が住み、家族ごとにゲルを設置します。

住居のほかに、納戸や倉庫に利用するゲルもあります。

住居の場合、入口を入って"正面中央"が、最も重要な場所なのですが、国民の大部分は、モンゴル仏教の信者なので、ここには主に、祭壇が設けられ、仏画や仏像が置れます。

もともとは、玄関を入って、右(東側)が女性、左(西側)が男性の座る場所と決まっていたのですが、最近では、このような慣習も無くなりつつあるようです。

また、移動式住居のため、当然水道などは無く、基本的にゲルは、自然水を利用できる川や池など水場の近くに建てられます。

天窓トーノの役割

ゲルの天井には"トーノ"と呼ばれる円形の天窓があります。

この天窓には"ウルフ"というカーテンのような役割をする布がかけられ、朝起きるとこの"ウルフ"を開けて日光を入れます。

ゲルは原則、北側入口になっていて、日の動きによって、時刻を知ることができるのです。

また、モンゴル高原の7月の気温は、昼間で25~30℃、朝晩は12~15℃ほどと、1日の中での温度差が大きいため、室温が上がる昼間には"トーノ"を開け、壁の周囲の裾を上げてゲルの中に風を通します。

また、"トーノ"にかける"ウルフ"を"御簾・すだれ"のような薄い木綿製にしたり、虫除けのために網目の布を使ったりすることもあります。

夏の昼間はほとんど"トーノ"を開けておきますが、夏でも夜間は温度が下がるので、ストーブを焚くことさえあります。

-10℃ほどの厳しい寒さになる冬には、地面に家畜のフンを敷き、その上に二重三重にじゅうたんを重ねます。

屋根にかぶせるフェルトも二重にし、壁はフェルトで三重に覆い、壁の下部には小さな板をならべ、すき間風が入らないように工夫します。

このようにゲルは、中央アジア、西アジアの広い地域の遊牧民に使用される遊牧生活に適応できるすぐれた移動住居なのです。

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