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地域主義
コペンハーゲンから北西に約10Km。
シドニーのオペラハウスで有名な建築家、ヨーン・ウッソン設計のパウスペアー教会(1976年)があります。
この教会は、建築史家ケネス・フランプトンの著書内で、批判的地域主義の代表として取り上げられている建物です。
批判的地域主義とは、グローバルで均一的な視点と、その土地の文化や気候などの地域性をうまく組み合わせた状態を目指す考え方です。
例えば、町おこしのために、その土地の特産品のトウモロコシを使って、お饅頭のようなメジャーな和菓子を観光客向けにつくったとします。
一見、地域振興に貢献しているように見えますが、地域の歴史や文化、日常生活などとの文脈がみえない場合、短絡的な地域主義となってしまいます。
批判的地域主義
フランプトンは、世界中どこでも同じように建ち並ぶ、機械主義の影響を強く受けた、現代建築の考え方に疑問を持っていました。
つまり、その土地の歴史や文化、気候風土などを無視したお饅頭のような建物は、その土地での日常や記憶と結びつかないと考えたのです。
いわゆる戦後の機会主義に大きく影響を受けたモダニズムへの疑問ということです。
そこで例えば、日本の伝統的な木造の技術・素材を使い、その地域の文脈を読み解いたものを現代建築のデザインに反映させることができないか。といった提案を行っています。
なぜこのような提案になるのかというと、恐らく時代背景も関係しているのだと思いますが、グローバルデザインなどといった言葉に隠れ、安易な記号的なデザインの操作に陥ることを危惧していたのだと思います。
さらに粗悪な場合は、ナチスが推奨した「ハイマート様式」のように、抑圧的なナショナリスムと結びついてしまうことも提案の理由になるのだと考えられます。
「ハイマート様式」とは、ドイツ語で「故郷」を意味する「ハイマート」という言葉に由来しています。
簡単に言うと、ドイツの伝統的な農村の家や建物を模した建築様式のことです。
ナチスは、ドイツ民族の純粋性や伝統を重視し、それを建築にも反映させようとしていたため鉄筋コンクリートのような近代的な素材や技術を避け、木材や石といった自然素材を使い、建物のカタチや装飾も伝統的なものを模したものを推奨したのでした。
この様式は、ドイツの田園風景に溶け込むような、素朴で温かみのある雰囲気が特徴です。
一方で、その時代のグローバルな技術や考え方を無視し、ナチスの思想を重視していたため戦後は否定的に捉えられるようになっていったのでした。
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