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アクロポリス博物館

アテネのアクロポリスで発掘された文化財を中心に、収蔵・展示しているアクロポリス博物館(2009年)。

現場の近くに建設されたこの博物館の設計者は、コンペによってスイス出身の建築家ベルナール・チュミとギリシア人のマイケル・フォティアドスが選ばれました。

そもそもチュミは、フランス国立図書館のコンペで、図書館とラン二ングサーキットを組み合わせるような過激なデザインを提案する建築家です。

一方、アクロポリス博物館のはそれほど前衛的ではありません。

しかし、内部の空間は、各層ごとに異なる世界感を展開し、衝突させています。

各層ごとに異なる空間

まず博物館全体が、ピロティ(支柱空間)によって支えられているのですが、この支柱空間には、古代遺跡が広がり、スロープによって丘の坂道を登る感覚をもたらしている入口部のガラスの床を通して眺めることができます。

上を向くと吹抜けがあり、各階の雰囲気も分かります。

2階はギリシア神殿を意識したような円柱が林立し、彫刻を中心としたエリアになっています。

そして3階は大きなテラスが、アクロポリスの丘に向かってはりだし、パルテノン神殿を眺めることができるカフェになっています。

最上の4階になると、すべてパルテノン神殿のエリアとなり、本物と同じ間隔で柱がならび神殿オリジナルのペディメント(小屋根の装飾)やフリーズ(帯状の装飾)の浮彫石板が、はめ込まれています。

現地には、劣化しても良いとしてレプリカを設置しています。

つまり垂直方向で考えると、地下の遺跡空間から最上階のパルテノン神殿空間まで、異なる空間が積み重なっているということです。

また水平方向では、3階のテラス4階のガラス張りのギャラリーから、本物のパルテノン神殿が望めるのですが、オリジナルの彫刻やレリーフは博物館に存在するという面白いネジレを起こしています。

一方建築物自体には、古代ギリシャ建築に見られるイオニア式やドリス式といった柱頭の装飾を排した抽象的な柱など、歴史的なモチーフを直接引用されていません。

その空間はシンプルで、パルテノン神殿が目の前にあるという立地を最大限に生かしています。

つまりアクロポリス博物館は、現代建築が場所を選ばず均一化していくことに対し、それぞれの土地や文化に根ざした建築を評価しているツオニス十ルフェーヴルによる批判的地域主義の事例に加えられるのではないかと考えられます。

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