いつもありがとうございます。【必要の場をツクル設計事務所】-長尾アトリエ の 長尾 です。
木材への置き換え
20世紀になり、建築材料の主流が"鉄・コンクリート・ガラス"へと移行することで、より自由な空間つくることが可能になりました。
それから100年。
建築材料が再び木材に置き換えられ始めています。
このような木質化への転換が進んできた背景には、20世紀末の"京都議定書"の発効なども含めて、地球環境問題への関心が高ったことが関係していると考えられます。
そして、地産地消のひとつとして、地域の森林を持続的に活用するといったことにつながっていくことになります。
森づくりを可能にする技術
戦後の1950年代頃の造林に着目すると、それが直線型の時間感覚によるものと理解できます。
当時、杉と檜からなる人工的につくられる単層林が、全国各地に急速に拡大します。
伐採の適期となる"21世紀初頭"には、木材の価格と需要が低迷し、40から50年生の"間伐材"利用が課題となります。
その後、約20年が経過した現在、70から80年生の杉や檜の"活用の時期"となることに気づくことになるのです。
これは、これからの約20年間は、"間伐利用"から"主伐活用"へと移り変わることであり、森林が"再造林"の循環へ転換することを意味します。
また、70から80年生の立木からは、太く長い梁や柱の生産が期待でき、高い階高や長い梁間を必要とする中大規模木造建築に、活用の可能性が広がります。
しかし、円環型の森づくりで忘れてはならないことは、再造林です。
未来において、持続可能な森林を維持するためには、造林費用を捻出する必要があります。
そのために、70から80年間という時間により生じた価値をもつ"原木"を製材し、さらに、集成材やCLT、合板等として使い分けることで、その価値を最大限に活かすことが必要不可欠になります。
しかし一方で、日本の森林は、高品質な原木から建築用材に不向きな木材まで多様に混在しています。
木一本を見ても大きさや質は部位により異なり、森林資源はどれも均質ではありません。
そこで、加工費用が大きい集成材等と、原木費用を大きくすることが可能な無垢材を比較すると、無垢材の活用が合理的だと分かります。
さらに、製材の過程で生じる廃棄物を燃料にすれば無駄無く使い切ることができます。
このように無垢材と集成材の製造を適切に調整することで、持続的な森林の育成に必要な経費を捻出していくことが可能となるのです。
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