改修の失敗

いつもありがとうございます。

【必要の場をツクル設計事務所】-長尾アトリエ の 長尾 です。

ドイツ"アルスフェルド市"の"都市壁"のように、

http://nagao-atelier.com/2017/09/10/stock-47/

歴史上重要な"建造物・工作物"が、

かつて"存在した"ことを示す"歴史的痕跡"を

その場所に、

記録しておくことも時には必要です。

しかし、

この歴史地区では、

老朽化した歴史的建造物を保存するために、

街路側の"表面"だけを残し、

表面以外は、

取り壊して"新しく造り変える"ことで、

修復後の建造物を"負の遺産"としてしまうなどの失敗が、

他にもあります。

例えば、

建築物の"街路に面する箇所"を

"ポルティコ"として"改修"している建築群があります。

"ポルティコ"とは、

玄関に導くための"柱列として拡がるポーチ"のことです。

アテネの"パルテノン神殿"を思い浮かべると

分かり易いと思います。

この"ポルティコ"を表現するために

街路に面する部分にもともとあった"木の柱"を

"鉄骨"に置き換え、

その鉄骨の表面を"木の板"で覆い隠しています。

そのため、

外見は"木構造"に見え、

本当は鉄骨構造であることが、

分かりづらくなってしまっています。

ここで一番問題なのが、

保存対象の歴史地区にも関わらず、

もともと"ポルティコ"が、

この街の"歴史上には存在しない"空間である…

ということです。

つまり、

歴史地区の公共空間に"嘘"の建築的表現を用いるために、

歴史的建造物に損傷を与えて"いる"ということです。

なんとなく、

ポストモダンと呼ばれた時代に、

日常の街には全く関係のない、

おとぎの国のキャラクターたちが、

飛び出してきたような感じがします。

では、

なぜこのような"嘘"の保存を行ったのか?

それは、

都市のデザインコンセプトに

・ 公共空間の"価値の向上"。

・ 旧市街地が、利益を得るための"開発コンセプト"。

・ 地元関係者が"元気になる"。

を掲げていることが関係しているようです。

このコンセプトは、

1966年、

モダニズムと呼ばれた時代を経て近代主義を追求した

当時の"市長"が、

街は、

過去の真似をせず、

新築の建物によって、

魅力的につくられなければならない。

と宣言したことに起因しているようです。

街が、

この宣言を守り続けてきてしまったため、

保存対象になった歴史的地区にも、

近代主義のデザインコンセプトを適応してしまい、

デザインコントロールの根拠を失ってしまったのです。

どこの街でも、

商業の活性化のために行う改修は、

常に優先順位が高く、

ルールの適用範囲を整理をしないまま、

街全体の改修を始めてしまうと

"文化財としての価値を失う都市再生"に、

つながる可能性があるようです。

。。つづく。