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デザインの原点

美しいランドスケープは、デザインだけで生まれる訳ではありません。

その土地に重なってきた「歴史」や「暮らし」が、風景の奥行きをつくります。

長崎市のある地域には、江戸時代の禁教令を乗り越えたキリシタンの歴史が残っています。

教会が点在し、今でも独自の文化が息づいています。

さらにこの場所は、原爆の影響を受けた場所にも近く、復興によって改めて構築された街でもあります。

つまりこの風景には、「祈り」と「再生」の記憶が重なっているのです。

田園に点在する家々、大切に残されてきた大きな木、自然の地形を活かした農地。

そこには、人と自然が無理なく共存する姿があり、地域のつながりそのものが風景として表れています。

こうした“見えない背景”こそが、デザインの原点になります。

花と言葉で風景をつくる

日本の伝統文化である生け花は、単なる装飾ではなく、自然を削ぎ落とし、本質だけで表現するデザインです。

例えば、 華道家元である池坊の考え方では、「真・副・体」という3つの要素で風景をつくります。

  • 「真」=山
  • 「副」=その奥の景色
  • 「体」=手前の世界

この3つだけで、ひとつの自然が立ち上がります。

要素を増やすのではなく、減らすことで豊かさを生み出すという考え方は、建築やランドスケープにも通じる、日本独自の美意識です。

世界の庭

視点を海外に向けると、庭の価値はさらに広がります。

ロンドンで開催されるチェルシーフラワーショー は、世界中のガーデナーが集まる最高峰の舞台で、国を挙げて注目されるイベントです。

そこでは庭は、単なる外構ではなく、文化や思想を表現する"作品"として扱われています。

大量の植物で構成されたダイナミックな庭、都市と一体化した空間デザインなど、日本とは異なるスケールと発想は、庭の可能性を一気に広げます。

日本の庭の可能性

では、日本の庭はというと、これからもっと評価されていく存在です。

石、苔、水など、限られた素材で構成される日本の庭は、「引き算」でつくられる美しさを持っています。

特に苔は、日本ならではの繊細な風景を生み出す重要な要素で、静けさや時間の流れまでも感じさせるその表現は、海外では非常に新鮮に映ります。

華やかさではなく、余白や気配で魅せる。

この日本的な感覚は、これからの時代にこそ価値を持つデザインです。

これからのランドスケープ

これからのランドスケープに求められるのは、単に「きれいな空間」をつくることではありません。

その土地の記憶を読み取り、人の関係性を編み込み、自然と調和させること。

そして、花や素材を通して、言葉での表現が難しい「価値」を伝えていくことです。

花と言葉で風景をつくる視点から、ランドスケープの可能性はまだまだ広がっていくのではないかと考えられます。

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