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ヴァナキュラー建築との違い
批判的地域主義とは、その場所の文化や風土を計画に取り入れず、世界中で同じ顔になってしまった近代建築に、改ためて文化や風土などの文脈を用いることで、乗り越えようとする取り組みのことです。
そもそも批判的地域主義という言葉は最初、建築理論家のアレクサンダー・ツォニス及び元大学教授のリアンヌ・ルフェーヴルによって使われます。
その後、少し違う意味で、建築史家のケネス・フランプトンによって用いられるようになります。
ここで区別しておきたいのが、その土地の気候や文化・材料に応じて造られるヴァナキュラー建築とは異なるということです。
このヴァナキュラー建築は、日本の民家のニュアンスで捉えられることが多いです。
もう一度整理してみますが、複数の人によって、批判的地域主義が唱えられているのですが、共通しているのは、ある地域の文化や歴史を批判的な視点で見つめ直すということです。
例えば、その地域の伝統や習慣が、本当に良いのかまたは問題があるのかを考えて、背景にある政治的な力関係や不平等を指摘するといったことです。
簡単に言うと、自分たちの住んでいる場所を客観的に見て、良い面と悪い面の両方を理解していくという方法になります。
優れた建築家の仕事
この批判的地域主義を体現していると言われるバウスペアー教会ですが、外観と内観の印象がまったく違います。
入口のある西側が正面ですが、迎え入れる感じではないです。
白く角ばったそっけない外観ですが、室内の印象はまったく変わり、特に礼拝堂は上部からの光を白い曲面の天井空間によって拡散させています。
恐らく、外観にも内部の曲面的な空間を反映させると、印象的な造形になる反面、高コストにもなります。
つまり、背景にある建築的思想を考慮しなくても「建築コスト」と「光の繊細さ」両方をコントロールして造られた豊かな空間といことです。
磯崎新氏がご自身の建築計画では、風水学を考慮しなくても必然的に風水にかなった空間になると言っていたように、優れた建築家の仕事がここにあります。
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