いつもありがとうございます。【必要の場をツクル設計事務所】-長尾アトリエ の 長尾 です。
遺産の維持
2014年に世界遺産登録された、群馬県「富岡製糸場と絹産業遺産群」。
登録から。。3年後。
観光客の"行列"は消えます。その理由のひとつに建物の"修復作業"を行っているモノの多くが、内部まで見学できず、がっかりして帰る人が、少なくなかったからです。
加えて、有形の遺産や文化財の維持・修復費用が、富岡製糸場の場合、この先10年だけでも100億円。
工事終了までに、約30年かかると言われています。
つまり、世界遺産を保有する"人口5万人"の"富岡市"は、観光客数を維持できなければ、市の持ち出しが増え、財政を圧迫する。。ということです。
そのため市では、世界遺産の建物を活用して観光客を呼び込もうとしており。。例えば、
- 製糸場の倉庫。
- 赤れんが造りの"西置繭所(にしおきまゆじょ)"。
を"宿泊施設"として改装を検討しています。。
しかし、またここに、ユネスコが定めた"ガイドライン"という壁が現れます。
ガイドラインでは、建物の"修復・変更"を行う場合、遺産としての"価値"を損ねないような配慮を求めています。
そのため、事前の綿密な協議に膨大な時間と労力が、かかることになり宿泊施設計画は、全く動いていないのが実状です。
保護する"対象"としての遺産なのですが。。
皮肉なことに登録されてから初めて、保護と活用についての議論が、起こる場合が増えているようです。
思ったように観光客が訪れなかったり、その状況を"なんとかしよう"と試行錯誤し、本来の目的である、遺産を"未来へ持続させていく"ことを忘れてしまったりと。。
いま、日本橋三越のように立地を活かし、顧客層を絞ることで、再生を試みている百貨店"以外"の全国の百貨店が次々に閉店しています。
先日、つくば駅前の閉店したクレオ(西武)の再生案が、議会で反対され、却下になったと新聞に載っていました。
現状に学び未来を見据えるのなら遺産の維持のみならず、
もしかすると、新築が当たり前なハードとしての公共事業が、再利用などのソフトとしての公共事業に移行する時期なのかもしれません。
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