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サフランポル
サフランポルはトルコ北部にある古都で、その地名は香料のサフランの集散地であったことに由来します。
11世紀から13世紀にかけて都市として整備され、17世紀に最盛期をむかえます。
当時の交通手段は、主にラクダ、ロバ、馬など、砂漠や山岳地帯などの厳しい環境でも移動できる動物が主流で、商人などの隊を組んで移動する集団をキャラバン隊と呼んでいました。
しかし20世紀にはいると、物流の中心が鉄道になり、険しい山々に囲まれ、鉄道を通すのが難しかったサフランポルは、近代化の波から取り残されていくことになります。
このため古い街並みや建築が良好な状態で数多く残ることになり、世界遺産に登録されることになります。
伝統的な邸宅
この街特有のオスマン建築に、コナックと呼ばれるトルコの伝統的な邸宅があり、その中には、屋内広間の中央にプールが設置された邸宅もあります。
多くの家は1階が石造で、2階が木造となっていますが、プールの位置は1階の場合と、2階の場合の両方があります。
大きさに決まりはありませんが、ほほ正方形で、その多くは深さは1m以上あります。
しかしこのプールは泳ぐためでも魚を飼う訳でもありません。
この地域では、地下水が自然に地表に湧き出た湧水が豊富であったことから始まったと言われ、最初は生活用水として使われていたのではないかと推測されます。
その後、大邸宅だけに見られる特殊な設備となっていきます。
機能自体は生活用水のほか、防火用、加湿用、冷房用とも言われていますが、室内壁面の作り方と周囲のデザインから、水面とその効果を楽しむために演出されていったと考えられています。
大きな部屋の中央のプールは、部屋の大半を占めその周りには、あぐらをかいて座るための奥行きが深いソファが並んでいます。
天井と壁の取り合い部分は、白い漆喰で仕上げた曲面または、傾斜面になっています。
その曲面または傾斜面に、窓からの光を水面がゆらめきながら反射させてできる、きらめきを楽しむようなつくりになっています。
これは、オスマン帝国時代にあった、水の反射や音、涼しげな雰囲気でリラックスしたり、客をもてなしたりする独特な水の演出のようです。
当時の文化を考えると、コーヒーと水タバコをたしなみながら光の揺らめきある空間で過ごすことは、この時代特有の美意識といえるのかもしれません。
その後のトルコ革命の影響で、アラビア文字からアルファベットに、床の生活から椅子の生活へと西欧化していきます。
変化する時代の中で失われた美意識も数多い中、その時代の美意識を認識できる数少ない記憶のひとつなのかもしれません。
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