いつもありがとうございます。必要の場をツクル設計事務所-長尾アトリエ の 長尾 です。
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色彩の一過性
ジャン・フィリップ・ランクロによる著書「色彩の地理学」。
この本の「景観分析」という項目に、「色彩の一過性」と「方法論」という2つの内容があります。
最初の「色彩の一過性」では、建物の色は「照度・素材・植物」の3つの要因で変化するとされています。
季節によっても違いますが、照度については、一日の中でも光は刻々と変わり続けるため、建物の見え方が異なるということです。
素材については、メンテナンスのため塗り替えられ、まったく異なる景色を見せるとされています。
さらに、植物も変化の大きな要素とし、四季のはっきりした日本では、自然がもたらす景観の変化の大きさを考えればよく分かります。
方法論
そして、2番目に挙げられている「方法論」がとても大事で、色彩の調査方法を「景観の分析」と「視的な総括」の2つに分けて説明しています。
1つ目の「景観分析」は、写真撮影・測色・素材採取・スケッチなどにより、建物の色彩を調査し、その地域の資料サンプルを詳細につくることです。
そして2つ目の「視的な総括」では、その資料サンプルをを単純に並べるのではなく、屋根・壁・扉などの部位ごとに分けてパレットを作成します。
この整理により、外観写真を並べただけでは、判断しづらかった屋根や壁の基調色の傾向や、アクセントとしての扉などの色彩傾向が明確になり地域の色彩の分析が可能となります。
すると地域ごとの住宅の色彩の違いは一目瞭然となります。
この方法によって、様々な場所での色彩パレットをつくり、地域ごとの色彩を比較することができるようになりました。
当時、建物を構造や意匠からではなく、色彩から見る手法は画期的でした。
地域の色の要因
「各地の地理・地質・気候・光の違いによって、色の使い方にも社会的・文化的傾向が生まれる。この結果が伝統的な住宅に表れている。」
フランス各地での調査からランクロは、このような考えにたどり着きます。
その後もヨーロッパから世界へと調査を続け、1995年に「ヨーロッパの色彩」、1999年に「世界の色彩」を発行しています。
「世界の色彩」では、兵庫県室津での調査方法・分析内容も紹介され、これは早い時期に日本でも取り入れられていくことになります。
1970年代当時の日本では、建築物の外装色を測るために、手づくりの色票を使って調査を行っていましたが、ランクロによる色彩を数値化(マンセル値)する手法を取り入れることで、分析技術が発展します。
南北に伸びる日本では、場所により伝統的な建築物の色彩は異なっています。
急速な近代化により、一様化したと考えられていた日本でも「地域ごとに色がある」ことが理解され、各地で地域に合った風景の模索が展開されることへとつながるのでした。
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