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不思議な建物
ベトナムの首都ハノイの民族学博物館に不思議な建築物があります。
中部の山岳地域に住む少数民族の集会所なのですが、博物館に設置しているにも関わらず、移築ではなく現地の人がこの地に来て建てたものです。
この集会所はニャーロンと呼ばれ、少数民族に共通の施設です。
村への来客の際には、臨時の宿泊所にもなり、祭りの儀式の場でもあります。
アニミズム
全ての自然物や無生物に人間の魂や霊が宿っているという思想はアニミズムと言われています。
ニャーロンの大きな屋根は、土着のアニミズムによるもので、大地と空を結ぶものという発想があるそうです。
ただ、この民族にはキリスト教の信仰があるため教会が別に設置されていて、ニャーロン自体は宗教施設ではありません。
ニャーロンの特徴
また、高床で大きな屋根が特徴なのですが、屋根の高さがより高いものや幅が広めなど、民族によっては、デザインが少しずつ異なっているようです。
しかし、集落の場所や民族によらず、なぜか常に高床になっています。
周期
ニャーロンは10年ほどで修繕されます。
この時すべての部材を新しくする場合もありますが、劣化していない部材には手を加えず、また柱を継いで使用したりしている例もあり、通り一辺倒にすべを一新することに、意味がある訳でもなさそうです。
床や壁で竹を使用している部分の寿命は当然短くなり、飛騨の合掌造りのように茅も厚ければ、寿命が延びそうですが、この建物は共通して薄く葺かれています。
また、建て替える場合でも全く同じカタチに復元するとは限らず、集落内で場所や向きを変えることもあります。
では、なぜ10年ほどの周期で、修繕や建て替えが行われているのか?
この民族は、もともと焼畑農業を生業としていたために、ひとつの土地の耕作が終わると、村ごと移動していました。
その周期が大体10年前後で、村の建築すべてがそれ以上の寿命を持つ必要がなかったのです。
つまり、現在のように民族が定住化しても建物の長寿命化をさせず、10年という習慣が残ったと考えられています。
少数民族の集会所は、集落のシンポルとしての存在が重要で、長く建築物を存在させることではなく10年ほどで建て替えることに意味がありそうです。
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