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課題共有から生まれる

仙台市に建つ宮城県美術館(1981年)は、老朽化の影響もあり、2019年頃に移転集約される話があがり取り壊される危機にありました。

これは、震災後の一時的な復興バブルの最終期、公共施設をより良く管理するための事業債の活用を前提に、突然浮上した計画です。

内容としては、震災の影響により取り壊しになった、仙台駅近くの仙台医療センター跡地に、県民会館やNPOプラザとともに美術館も移転集約するという話でした。

つまり、管理を合理的に行うために借金をして、公共施設を集約するということですが、実際には、美術館の面積を減らして県民ホールを大きくするという文化より賑わいを優先する内容でした。

これは、2020年に集約計画を断念した際、施設を合理的に管理するという大きな目的を取り下げ、新設する県民会館の面積を大きくすることは維持しながら事業計画を進めていることからも分かります。

この集約に伴う美術館解体の危機に、存続を求める県民によるネットワークが立ち上がります。

40年前の美術館設立時に活躍した美術教育の関係者を筆頭に、学者・文筆家・画家、さらには全国各界の著名文化人に加わり立場や分野を超えたコミュニティは課題の共有から生まれたものでした。

歴史

この様なコミュニティは、カタチを変えて何度も立ち上がった過去があります。

例えば、文筆家などによる、まち遺産ネット仙台(2006年)では、仙台駅前に残っていた戦前建築や災害時の備蓄場所として使われていた仙台政府倉庫の保存活動を行っていました。

さらには、大正時代につくられた国の登録有形文化財である荒巻配水所旧管理事務所を含めて、他にも多くの建築物についても活動しましたが、ほとんど解体され現存していません。

保存されない構図

ペデストリアンデッキとは、大型の公共歩廊のことで、主要な地方都市の駅前にある歩車分離のためのデッキが代表的な設置方法です。

このペデストリアンデッキの中で日本最大級のモノが仙台駅にあり、商業施設・オフィスビル・教育機関・公共施設と多岐にわたる建物と広範囲に渡り連結しています。

1日の通行量が30万人とも言われ、渋谷駅の1日の利用者数とあまり変わりはありません。

この駅前のデッキを街全体に重ねてみると、上の歩道部分には、外部から流れ込んでくる人口100万・杜の都のイメージ、グランドレベルの車道には、先代から住み続けている地方市街地につながるリアルがあります。

そしてこの構造は、初代藩主の伊達政宗により樹立された仙台藩(1601年)の時代から約400年も続いているのです。

大名が家臣に対して(江戸幕府の場合は旗本に対して)、一定の土地の支配権を与え,旗本・家臣が年貢等を徴収し、その代替を受けることを地方知行制といいます。

この制度により、現在の岩手県南までを含めて参勤交代をさせていたため、仙台市はもともと流動することを前提としたスティ・シティ(滞在都市)でした。

一方で年月が経ち趣をまとった有形資産は、先代から住み続けている地方市街地に多く存在するため流動的な賑わいに飲み込まれてしまいがちです。

しかし、宮城県美術館については、地方市街地のみで、その価値を認められている訳ではなく、県民全体の文化芸術資産と認識されています。

このため多くの人々が行動を起こし、流動性の高い地域と地方市街地が徐々に結びついていったのでした。

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